管理人が宮崎まで遠出した際の覚書です。魅力的な地質遺産と景観に恵まれた地域ですが、サイトが紹介している指宿・頴娃のものとは接点がありませんので、番外編とせざるを得ませんでした。
最後の“大御神社”は、2019年に前年の取りこぼし分を追加したものです。
天安河原の阿蘇3火砕流堆積物と甌穴 |
馬ヶ背~尾鈴酸性岩類の柱状節理~ |
青島の鬼の洗濯岩(青島互層) |
鵜戸神宮、波切神社と鵜戸の千畳敷(鵜戸互層) |
ケスタ地形と内海互層 |
大御神社(尾鈴酸性岩類・庵川礫岩) |
阿蘇は4度に亘って大規模火砕流を噴出していますが、高千穂の名瀑真名井の滝を囲む柱状節理は13万年程前の阿蘇3火砕流堆積物です。これを覆うバナナ状のエンタブラチャーや仙人の屏風岩は約9万年前の4度目の噴火の地質遺産とする説が有力ですが、阿蘇3/4火砕流堆積物の境界については諸説あるようです。
下の画像の玉垂の滝のような節理の間からの湧水は大隅でもみることはできるものの、そこは高千穂。天の真名井の水が湧出ているという伝承があるそうです。その上の月形は、天照大神が岩戸に籠られる原因となった素戔嗚尊の反省の証。不完全な放射状節理が剥落したかにもみえます。日形もあったそうですが、崩落して残っていないとのことです。
高千穂峡周辺の地質図はこちら地質図Navi“5万分の1地質図幅:三田井”,地質調査総合センター。Pop-upウィンドウ内でズーム・コントロールでの拡大・縮小とマウス・スクロールでの移動が可能です)。以下が凡例です。
天岩戸宮が祀られる仰慕窟のある天安河原で知られる岩戸川流域も阿蘇火砕流堆積物が分布する地域です。天岩戸宮に向かう遊歩道では、柱状節理と甌穴を観察することができます。
天照大神もご覧になった景色でしょうか。
地質図はこちら(地質図Navi“5万分の1地質図幅:三田井”,地質調査総合センター)。凡例は高千穂峡のものと同一です。
新第三世紀の尾鈴酸性岩類より成る細島半島の柱状節理。最大比高は約70mと、高千穂峡の仙人の屏風岩と同程度ですが、奥行き200mほどの狭い湾入に並ぶ露頭を上から見下ろすせいか、規模感にはかなりのものがあります。
展望台に向かう遊歩道からして既に左の画像のような迫力です。
こちらが馬ヶ背の地質図(地質図Navi“5万分の1地質図幅:富高”),地質調査総合センター。以下が凡例です。
青島互層。今回の宮崎行きを思い立つきっかけになったブラタモリ(近江友里恵アナウンサー最終回となった#100宮崎)でも、ここで鬼の洗濯岩を形成した砂岩と泥岩の差別浸食が説明されていました。宮崎層群に属する砂岩・泥岩互層の中では最も新しい地質遺産です。
左の画像も青島互層ですが、こちらは堀切峠下。若き日のタモリさんご一行が事故られた辺りです。
地質図はこちら(5万分の1地質図幅:日向青島,地質調査総合センター)で、以下が凡例。“ケスタ地形”の項で触れる内海互層も分布しています。
鵜戸神宮は海蝕洞に祀られていますが、現在は海蝕が進む位置にはなく、約7,000年前の縄文海進時に形成された地質遺産と考えられています。周辺は砂岩と泥岩の鵜戸互層ですが、海食洞は砂岩単層で、内部はコンクリーションから溶出した石灰質に覆われています。
波切神社の本殿が祀られている不動窟も鵜戸神宮と同じく砂岩単層です。こちらは海際に位置する現在進行形の海蝕洞で、内部にも鵜戸神宮のような滑らかさありません。
鵜戸互層は、海岸参道に沿って鵜戸崎の西に拡がる千畳敷と呼ばれる鬼の洗濯岩で確認することができます。中新世の宮崎層群に属する砂岩・泥岩互層のうち最も古い地質遺産です。
こちらが地質図(5万分の1地質図幅:飫肥,地質調査総合センター)、以下が凡例です。
波切神社の不動窟からは、富土のケスタ地形を望むことができます。層厚があるために波蝕を免れつつ隆起した砂岩層で、日南海岸には広範に分布します。右の画像の前景、観音岬に拡がる鬼の洗濯岩は内海互層。鵜戸のものよりも新しく、青島のものよりは古い宮崎層です。
地質図は鵜戸互層の項にあるものをご参照ください。
馬ヶ背のある細嶋半島の付け根に祀られる大御神社でも尾鈴酸性岩類の柱状節理を観察することができます。境内の亀石は海蝕作用によって形成された自然の造形。下左の画像で手前の“へ”の字型が親亀(左が頭部)、右の画像中央の觜が子亀、その先の岩塊群が孫亀です。
さざれ石(庵川礫岩)の神座の前には、“龍神の霊”があり、説明版には“この水窪周辺は五千年前(縄文時代)の人が龍宮信仰をしていた古代遺跡です。古代の人々は、岩を渦状に刻み龍を表し底には生命の源である龍玉を納め、それを守るように山水を注ぎました”とありますが、縄文時代の人々に“龍”の概念はあったでしょうか。内部の岩塊が摩耗して消滅する前に隆起して形成が中断した甌穴のようです。
最後の画像は“龍宮”と呼ばれる境内社の鵜戸神社。高さ 20m、奥行40mほどの海蝕洞の奥に祀られる社のそばから入口方向を振り向くと、天に上る龍の姿を拝むことのできるパワー・スポットで、右の画像をクリックして頂ければその姿がPop-Upで表示されます。
こちらが地質図。馬ヶ背と同じく“5万分の1地質図幅:富高(地質調査総合センター)”で、凡例も同じです。
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